わらびやこごみ、たけのこと並んで春の味覚を代表する山菜ぜんまい。乾燥させたものも水煮のものも美味しいけれど、旬の季節には生のぜんまいを楽しみたいですよね。生のぜんまいを美味しく食べるための下処理とあく抜きの方法をご紹介します。
ぜんまいにあく抜きが必要な理由
山菜といえば「あくが強い」というイメージがありませんか?たけのこ、わらびなど春の訪れを感じさせてくれる旬の味覚は美味しいけれど、あく抜きが大変。生のぜんまいもそのまま食べるとえぐみが強いのであく抜きが必要です。
ぜんまいのあくの成分
あくはえぐみのもとである他、あくの成分には体の中のビタミンB1を分解して、ビタミンB1欠乏症を引き起こす可能性のある酵素チアミナーゼが含まれています。チアミナーゼは熱に弱いのでしっかりあく抜きをする必要があります。
実は山菜の中でも、ぜんまいはとくべつあくが強いといわれています。採ったらすぐにあく抜きをしないと、どんどんあくが強くなってしまいます。ぜんまいが乾燥させたものや水煮のものが市場に出まわることが多いのは、どうやらあくの強さが原因の一つのようです。
ぜんまいとわらびの違い
ぜんまいとわらびはよく似ているので間違われることも多いのですが、以下のような違いがあります。
ぜんまいの特徴
ぜんまいの旬は3月から6月にかけて。ゼンマイ科のシダ植物で、山奥の渓流の近くや水路沿いなどの湿気の多いところに生えます。乾燥させたものや水煮のものが市場に広く出まわっているので、旬の季節にかぎらず一年を通して食べられている山菜です。
ちなみにぜんまいには、男ぜんまいと女ぜんまいがあるのをご存じですか?食用にするのは女ぜんまいで、男ぜんまいを採ってしまうと、そこからぜんまいが生えなくなってしまうといわれています。山菜採りのマナーでは男ぜんまいは採らないのだとか。ぜんまいの先端がふくらんでいるのが男ぜんまい、ふわふわの綿毛に包まれて扁平なのが女ぜんまいです。
わらびの特徴
わらびの旬はぜんまいより少し遅くて4月から6月にかけて。わらびはコバノイシカグマ科のシダ植物。草地や林の入口、土手などの日当たりのいいところに生えます。わらびには発がん性物質であるプタキロサイトが含まれていますが、ぜんまいにはありません。
ぜんまいの下処理の方法
生のぜんまいのあく抜きをするには、その前にぜんまいの下処理をする必要があります。ぜんまいの下処理の手順は以下のとおりです。
- ぜんまいは採ったときから切り口が硬くなっていくので、まず切り口の硬くなった部分を包丁で切り落とします。
- ぜんまいのまるまった先端についている、ふわふわの綿毛を丁寧に取りのぞきます。軍手をがあるとやりやすいでしょう。
- 切り口を落として綿毛をとったぜんまいを、流水できれいに洗う、もしくは大きめの鍋やボールにたっぷり水を張ってふり洗いします。
このぜんまいの綿毛に真綿をまぜて紡いだ糸を使用する「ぜんまい織」という伝統的な織物があります。ぜんまい織は防水性と保温性に富み、防カビ・防虫効果もあるとか。昔の人の知恵がつまっていますね。
ぜんまいのあく抜きの方法
生のぜんまいは時間がたつとあくが強くなるので、できるだけ早くあく抜きをしましょう。
あく抜きの方法は、わらびのあく抜きとほぼ同じですが、ぜんまいの方がわらびよりもあくが強いので、わらびのあく抜きよりも時間がかかると考えておいた方がよさそうです。
重曹でぜんまいのあく抜きをする方法
まずはいちばん一般的な重曹を使ったあく抜きの方法です。
- 鍋にたっぷりの水をはって沸騰させます。
- 重曹を入れて、下処理をしたぜんまいを入れます。菜箸などでゆっくりかき混ぜて、ふたたび沸騰する前に火をとめます。
- 重曹は水1リットルに対して小さじ1。重曹を入れすぎるとぜんまいが溶けてしまうので、入れすぎないように気をつけましょう。またぜんまいのゆで方のコツは、ゆですぎないこと。ゆですぎるとクタクタになって、歯ごたえが失われます。
- ぜんまいを湯に浸かった状態にするために落し蓋、または軽めの重しになるものを乗せて、冷めるまで放置します。
- 完全に冷めたら水をかえて、一晩水にさらしておきます。このあいだに2回ほど水をかえます。まだあくがでるようならさらに一晩おきましょう。
重曹なしでぜんまいのあく抜きをする方法
重曹を使わないぜんまいのあく抜き方法もあります。
- 鍋にたっぷりの水をはって下処理をしたぜんまいを入れます。
- 水からゆでて沸騰したら火をとめてぜんまいを取りだします。また水からゆでて沸騰したら火をとめて…と同じ作業を3回くり返します。
- 3回目は湯をすてずに落し蓋をして、そのままぜんまいを一晩放置します。まだあくが抜けていないようなら水をかえてさらに一晩おきます。
木灰でぜんまいのあく抜きをする方法
- 鍋に下処理をしたぜんまいを並べます。
- 木灰をぜんまいになるべく均一になるようにふりかけて、沸騰した湯をまわしかけます。落し蓋をしてそのまま一晩おいたあと、ぜんまいを流水でよく洗います。
小麦粉と塩でぜんまいのあく抜きをする方法
ここまでご紹介したのは一般的なあく抜き方法ですが、あくは抜けやすいけれど時間がかかるのが難点です。
生のぜんまいを突然いただいてしまったけれど「どうしても時間がない」というときのために、小麦粉と塩を使った超時短かつ超簡単なあく抜き方法をご紹介します。
- 鍋に水1リットル、小麦粉大さじ2、塩小さじ2を入れて、よくかき混ぜます。
- 火にかけて沸騰したら下処理したぜんまいを入れて、弱火で3分ほどゆでます。
- ゆでたぜんまいを取りだし、冷水に10分ほど浸けます。
たったこれだけの工程であくが抜けるというから、すごいですよね。どうしても時間がないというときに試してみてはいかがでしょうか?
ぜんまいのあく抜きに失敗した場合
上のいずれかの方法でぜんまいのあく抜きを試してみたけれど、あくが強くてとても食べられない…。そんなときは、どうすればいいのでしょうか?
水にさらす時間を長くする
あく抜きしたぜんまいをさらに半日もしくは一晩、水をとりかえてさらしましょう。
もう一度あく抜きをする
あまりおすすめの方法ではないのですが、もう一度同じあく抜き方法をくり返す、または別の方法であく抜きをしてみます。ぜんまいがすでに柔らかくなっていると、さらに熱を加えることでクタクタになってしまうので、加熱しすぎに注意してくださいね。クタクタになったぜんまいは独特の歯ごたえが失われて、美味しさが半減してしまいます。
ぜんまいを乾燥させる
山で採ったぜんまい干す pic.twitter.com/F9nPJELxUy
— ネコ農シーズン4 (@gold_roman_red) May 5, 2020
ぜんまいの採れる地域では、ぜんまいは乾燥させるのが一般的です。保存食として乾燥させるのですが、あく抜きに失敗したぜんまいも乾燥させればじゅうぶん食べられるようになります。
乾燥したぜんまいの戻す方法
- 乾燥させたぜんまいを水からゆでて、沸騰したら火をとめてぜんまいを取りだします。また水からゆでて沸騰したら火をとめて…と同じ作業を3回くり返します。3回目は湯をすてずに一晩放置します。
- 水を入れかえて沸騰したら火をとめて、さらに一晩おきます。
調理方法を工夫する
ぜんまい…頂きました!
— 茶碗蒸し (@happydining_w) April 14, 2020
煮物だと灰汁抜きに灰か重曹が必要らしく、どちらも無かったので天ぷらにしました
揚げたてを食べるのがやっぱりうまい
アスパラぽいなと思いました🤤
余ったらお蕎麦かな? pic.twitter.com/4CoCNRvIxw
あく抜きが失敗しても、調理方法でぜんまいのあくを感じにくくする方法もあります。
他の山菜とも共通していますが、天ぷらや油炒めなど、油を使った調理法は比較的にあくを感じにくくしてくれます。また味つけを濃い目にするのもいいかもしれません。
まとめ
乾燥させたぜんまいや水煮のぜんまいは使い勝手がいいけれど、やはり旬には生のぜんまいを食べてみたくなりませんか?ぜんまいのあく抜きといえば、手間と時間がかかるイメージがありますが、小麦粉と塩を使った超時短かつ超簡単な方法もあります。
あく抜きが失敗しても、水にさらす時間を増やしたり、調理法を工夫したりすれば、食べられるので安心してください。どうやっても無理なときは乾燥させてみてくださいね。