鶏肉が腐る・臭い!匂いや変色、見た目での見分け方や賞味期限について

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皆さんは「鶏肉」お好きですか?

ご家庭の食卓や、コンビニ、スーパー、ファストフード店、飲食店などなど、鶏肉を目にしたり食べたりしない日の方が珍しいかもしれません。

独立行政法人農畜産業振興機構のデータによると、日本人の食肉消費量は年々多くなってきており、1960年には牛・豚・鶏肉合わせてわずか3kgだった年間消費量が、2016年には31.4kgにまで伸びています。特に、鶏肉は13kgと一番多く、豚は12.4kg、牛は6kgとなっています。日本のお肉消費量でずっと不動の1位だった豚肉から、鶏肉がトップの座を奪ったのが2012年。近年、サラダチキンなどの「むね肉(胸肉)」消費量が増えたことが、この快進撃の要因のようです。

外食や加工品での利用が全体の6割と多い鶏肉ですが、安くてたんぱく質が豊富、かつヘルシーなことから、ご家庭でよく調理する方も多いと思います。

ただ、鶏肉を腐らせてしまった!という経験があったり、買ってきたり保存していた鶏肉の色が変?くさい?これ腐ってるの?食べられるの?などと疑問を持ったことがあるのではないでしょうか?

この記事では、鶏肉が腐る原因や、賞味期限、腐って食べられない鶏肉の見分け方、ニオイがあっても食べられるおすすめレシピなどもご紹介しますので、是非最後まで読んでみてくださいね。

ちなみに、「鳥肉」と書く場合、キジやカモ、七面鳥などの「とり肉」の総称となるので、ここでは「にわとり」のお肉である「鶏肉」と表記しています。

目次

腐るってどんなこと?

まず、最初に「腐る」とはどんなことなのか、その定義について説明したいと思います。ちょっと難しい内容もありますが、しばしお付き合いください。

腐ることを、科学的には「腐敗(ふはい)」といいます。「腐」は「肉や組織がくずれて原形をとどめない状態」を表し、「敗」にはもともと「くさる」という意味があります。

科学的「腐敗」は、広義(ひろい意味)では「食べ物などが微生物に分解されて品質が劣化していくことを示す」言葉です。そして、狭義(広義の中に含まれる)の「腐敗」とは「たんぱく質が分解された結果、有害で悪臭のある有害物質ができる状態」を表します。同じく狭義の言葉「変敗」は「炭水化物・脂が分解され劣化した結果、食用に適さない状態」のことです。

つまり、微生物がいない場所はほとんどないので、すべての食べ物は最初から微生物に分解され、少しづつ劣化している=腐敗が始まっているのです。そして、食べられないほど劣化した状態が一般にいう「腐敗=腐ってしまった」ということになります。説明がわかりにくいかもしれませんが、「腐敗」には「食べられる→食べられない」の境界線があるということだけ覚えていただければ、と思います。

また、微生物に分解された結果、風味が増したり栄養価が高まったりする状態を「発酵」や「熟成」といいます。つまり、「腐敗」と「発酵」・「熟成」は表裏一体ともいえるのです。

鶏肉が腐る原因一覧

今まで説明してきたとおり、「腐敗」の根本原因は微生物の存在です。では、その微生物とはどのようなものか、微生物が働きやすい状態=腐ってしまう原因はなんなのか、もう少し詳しくみてみましょう。

微生物

微生物とは、「人の目に見えない小さな生き物」の総称で、「真菌(カビ・酵母)」「細菌」「ウイルス」に分けられます。

真菌

微生物の中でも一番大きく、人の細胞に近い生き物です。いわゆる「カビ(糸状菌)」や「酵母」のことで、実はキノコもこの仲間なんです。胞子が糸のような芽を出して成長し、さらに胞子を出すというサイクルで増えていきます。納豆作りに使う「糸状菌」やイースト菌などの「酵母」など、有益なものもたくさんあります。

細菌

真菌より小さく、二つに分裂しながら増えていくのが特徴です。「大腸菌」や「黄色ブドウ球菌」・「カンピロバクター」など、食中毒の原因菌が多いのですが、「乳酸菌」など人体に有益なものもあります。

ウイルス

コロナウイルスに代表される、とても小さな生き物です。自分自身では増えることができず、人間などの動物(宿主)の細胞内に入り込んで(感染)、その細胞の中で増殖します。食中毒を起こすものでは「ノロウイルス」が有名です。

肉という食べ物の性質

ストレートな表現で申し訳ありませんが、「肉」とは「死んだ動物」です。細胞は、死滅すると自分自身を消化し、どんどん組織を柔らかくしていきます。また、生きている時は働いていた免疫などの「生体防御機構」が働かないため、微生物が繁殖しやすい、という性質上の宿命?を持つ食べ物なのです。ちなみに、植物は収穫してからも「生きている(呼吸している)」ので、肉よりも腐りにくいのです。

鶏肉は水分が流出しやすい(ドリップが出やすい)

鶏肉はお肉の中でも柔らかく水分が多いため、本来は旨味成分でもある組織内の水分(ドリップ)が出やすいという欠点があります。多くの微生物は水分が大好きなので、ドリップの中でぬくぬくと繁殖し、腐敗が進んでしまいます。

鶏肉には微生物が付着しやすい

にわとりは、豚や牛に比べてとても体が小さい動物です。このため、加工処理段階で内臓などに含まれる細菌などの微生物が付着しやすいと言われています。もちろん、加工処理は基準をクリアした清潔な専門施設で衛生管理を徹底して行われ、専門の「食鳥検査員(獣医師)」がチェックしていますが、微生物を完全に除去することは不可能なのだそうです。

消費者側の問題

お買い物をする時に鶏肉を売り場からカゴに入れて長時間ウロウロしてしまった、帰りに寄り道してしまった、お家に戻ってから買い物袋を放置してしまった、お料理の途中にスマホに夢中になり冷蔵庫から出した鶏肉を放置してしまった…思い当たることはありませんか?

このように、常温に長時間放置すると微生物がどんどん増えてしまいます。いったん微生物が増えた状態で慌てて冷蔵庫に入れても、そのスピードが弱まるだけで増え続けることに変わりありません!

鶏肉の賞味期限

「賞味期限」とは「おいしく食べられる期限」=「品質保持期限」のことです。賞味期限は加工販売業者が独自の基準で設定するもので、実際に「おいしく食べられなくなる前の日数」に0.7~0.8倍をかけて表示されていることがほとんどです。つまり、賞味期限が7日だっったとしても、本当は10日まで大丈夫だったりします。

「消費期限」も、実は「賞味期限」と同じ「品質保持保持期限」のことなのですが、この期限が5日以内と短いものについて使われています。鶏肉は生鮮食品なので「消費期限」が表示されていますが、ここでは、下処理などをせず保存した場合の一般的な「おいしく食べられる期間」という意味で、「賞味期限」について説明していきます。

賞味期限を長くするための方法については、後半の記事<鶏肉を腐らせないためにできること>で詳しくお伝えしますので、是非最後まで読んでくださいね。

肉の中で鶏肉の賞味期限は長い方?

鶏肉は、豚肉や牛肉に比べて水分が多く脂肪が少ないため、腐りやすいお肉です。一番腐りにくいのは牛肉、次が豚肉で、この中でも水分が多く脂身が少ない部位ほど腐りやすくなる、と覚えてください。

スーパーなどで販売されている鶏肉にはほとんど「若鶏(わかどり)」という表示がされていると思います。日本の鶏肉のほとんどは、短時間に成長するように改良された若い鶏の肉(ブロイラー)なので、肉の締まりが弱く水分が出やすい性質があります。お肉のパックには通常水分を吸い取るシートが入っていますが、それでも水分がにじみ出ている状態を見ることもあるかと思います。

ちなみに「ブロイラー」は、英語の「ブロイル(broil)=オーブンで焼く、あぶる」に適している、ということが語源です。つまり、焼くことに適した柔らかいお肉というわけです。

若鶏は産まれてから50日ほどでお肉になるのに対し、「地鶏」や「かしわ」などの地方在来種の鶏は、肉になるまで数カ月かかります。ですから、身が締まって歯ごたえがあり、賞味期限も1~2日長くなります。

スーパーで買った場合の賞味期限

スーパーなどで鶏肉パックの表示を見ると、「製造年月日日」と「消費期限」が書かれています。さらに表示を見てみると、保存温度についても必ず書いてあるはず。食肉の場合は、「4℃以下で保存」と書かれていることが多いと思います。

つまり、この場合4℃以下をキープした状態で保存した場合、食べきるべき期限が、「消費期限」の日付というわけです。お店にもよりますが、「製造年月日」+3日程度の日付が「消費期限」になっているのではないでしょうか。

では、「おいしく食べられる期間」である「賞味期限」はどうなのでしょう。お買い物してご家庭に戻るまでの時間、その間保冷されていたどうか、ご家庭に帰ってから保存するまでの状況などによって異なります。

お買い物する時には、お会計の直前にカゴに入れる、持ち帰る際に保冷バッグや保冷剤・氷を使用する、ご家庭に戻ったらすぐに冷蔵庫のチルド室に入れる、など温度管理に注意すれば、「消費期限」=「賞味期限」と考えて大丈夫です。もし常温に長時間放置したりした場合「消費期限」そのものも短くなりますが、さらに「消費期限」>「賞味期限」となります。

冷凍保存した場合の賞味期限

お買い物をした後に適切な温度管理をし、すぐに冷凍した場合には2~3週間ほど保存できます。必ず、パックから出してラップなどで包み密封してくださいね。

鶏肉の部位で日持ちする期間は違う?

基本的に、水分が多く脂肪が少ない部位ほど日持ちしにくいという原則があります。また、部位が小さかったり、カットされていたりなど、空気に触れる部分が多いほど日持ちが悪くなります。日持ちが悪いものから順にご説明します。なお、ここで説明している日数は、加工日からの日にちと考えてください。

内臓(モツ)

もともと新鮮な鶏のものしか食べられない部位です。その日のうちに、必ず加熱して食べましょう。

ひき肉

細かくなっているため、空気や水分に触れる部分が多く最も日持ちがしないものです。表示されている消費期限も1~2日。できるだけこの期間内に消費することをおススメします。

ブツ切り骨付き肉・手羽元

表面積が広いことに加え、固い骨によって包装が破れやすいこと、骨の周辺から血などのドリップが出てしまうことから日持ちしません。やはり1~2日のうちに使いましょう。

カット肉・ささみ

一口大などにカットされて売られているものや、「ささみ」も一つ一つが小さいので、空気に触れやすく、お互いに触れあってる部分で微生物の繁殖が活発になるため、日持ちしにくいものとなります。特にドリップが出ている場合は3~4日以内に使う方がいいでしょう。

むね肉

水分が多く、ドリップが出やすいので日持ちがそれほどしません。ドリップが多く出ているほど日持ちしなくなります。3~4日程度の日持ちと考えましょう。

もも肉

脂肪が多いことと、身が締まっていることから、むね肉より日持ちします。いつまで持つのかと言えば、1週間程度。温度管理がちゃんとしていることが条件です。

手羽先

脂肪分の多い皮でおおわれているので、一番日持ちがする部分です。手羽元と違い、水分が少ない部位でドリップも出にくいので、だいたい1週間程度の日持ちとなります。

鶏肉が腐るとどうなる?腐った鶏肉の見分け方

腐った鶏肉の見た目

鳥肉は通常綺麗でツヤがあるピンク色をしています。これは、肉の中にある「ミオグロビン」という「色素タンパク」の色で、酸素と結合すると赤みが増し、酸化が進むと褐色になる特徴があります。鶏肉は牛肉や豚肉に比べて「ミオグロビン」が少ないのでピンク色になるというわけです。ちなみに、運動量が多い部位ほど「ミオグロビン」は多いとのこと。

腐敗が進むと、だんだん白っぽく透明感がなくなり、灰色になってきます。ときには緑色・黄色・茶色・黒色になることもあります。一部の例外を除いて、変色は腐っている状態を表し、脂身が黄褐色になっているのも危険なサインです。

表面に粘りのある膜がかかっていたり、、触るとネバネバした糸を引いたり、白や黒のフワフワしたものが表面を覆っていたりする場合も腐っています。鶏肉はもともとヌルッとした触感がありますが、洗ってもぬるぬるが取れなければ腐っていると判断しましょう。

腐った鶏肉の匂い

腐った鶏肉によくある匂いのひとつは、硫黄の匂いです。硫黄温泉と同じで、いわゆる「卵が腐ったようなニオイ」ですね。

また、ツーンと鼻につくすっぱい臭いや、生ゴミのようなにおい、カビくさい、土臭いなども腐った肉です。

鶏肉が変色!状態を色で見分ける方法

鶏肉の色で状態を見分ける方法を、もっと詳しく見てみましょう

緑色って見るからに危険そうですよね。ただ、これが「ささみ」の場合、ごくまれに発症する「緑筋症」という病気です。ささみは翼を羽ばたかせるための筋肉で、疲労回復物質の「イミダペプチド」などがたくさん含まれています。この筋肉中の酸素が不足し、急に翼をバタバタさせることが原因で、「乳酸」が急激に増加し、最終的には筋肉が萎縮・壊死してしまいます。この時、肉の中にあるミオグロビンという赤い物質が、緑のコールミオグロビンという物質に変化してしまうとのこと。

なんだか難しいですが、結論からいうと、病原菌による病気ではないので、食べても大丈夫です。

なお、ささみ以外の鶏肉の一部分が緑の場合、細菌の増殖による硫化水素がミオグロビンを変質させることによる変色で、腐っている状態です。見分け方は「硫黄のにおい」がすることです。

運動をしないブロイラーの胸肉などは最初から白いので、色だけでは判断できませんが、白いぶつぶつがあったり、フワフワしたものが見えるようなら、カビが繁殖して腐っています。においをかいでみて、かび臭さや土臭さを感じたら食べるのはやめましょう。

灰色

灰色っぽくなっても、一部分だけなら食べれなくはないのですが、焼いても灰色部分が白くならなければアウトです。灰色が全体に広がって、肉の弾力もなくグタッとしていたらあきらめましょう。たぶんきついニオイもするはず。

黄色

皮と身の間にある黄色いものは脂肪分なので大丈夫ですが、いわゆる「鳥臭い」原因にもなるので、できれば取り除きましょう。取り除くことで、カロリーも抑えられます。

また、メキシコ産鶏は、脂だけでなく身や皮が黄色く見えるものが多いようですが、これはエサに「マリーゴールド」を混ぜているからで、メキシコでは「黄色くないとダメ!」らしいです。ブラジル産のものも黄色っぽいですが、これば濃い色のトウモロコシを食べているからだそう。たまごの黄身もそうですが、エサで色はけっこう変わります。

身の部分に黄色い斑点が出た場合は、細菌が増殖して腐っていますので、食べないようにしましょう。

緑がかってる青の場合は、緑の時の判断法と同じでニオイで判断しましょう。基本的には食べない方が無難です。

真っ青に近い場合、カビなどが考えられるので、食べないようにしましょう。

茶色

いやなニオイがしなければ「酸化」で、劣化している状態なので、食べられますが味は落ちます。もし、ぬめりがあったりしたら腐ってしまっています。

黒い部分があったり黒ずんでいたら、カビなどが繁殖しており、危険な状態です。絶対食べてはいけません。

鶏肉が臭い!これは食べられる?

においについても詳しく見ていきましょう。

鳥臭い

鶏肉には鶏特有のニオイがあります。表現が難しく「鳥臭い」としか言いようがないのですが、人によっては苦手なニオイでしょう。近年は、エサを工夫することによって、このニオイは低減されています。有名なものは「ハーブ鶏」ですね。もちろん、鳥臭くても食べるのには問題ありません。

酸化臭

魚の場合が多いのですが、鶏肉にも多少このニオイがあります。「酸化臭」とよばれ、脂質が酸化して「過酸化脂質」に変化する過程で発生します。生より焼いた時に嫌なニオイが強くなるのが特徴です。実は「加齢臭」もこの「過酸化脂質」によるものなんだとか。肉の中の「金属イオン」が酸化を促進するのですが、この働きを阻害するのが「クエン酸」。そして、この働きを「キレート作用(効果)」といいます。食べるのには問題はありませんが、風味が悪くなっています。

硫黄臭い、卵の腐ったようなニオイ

細菌による腐敗で、食べられません。多くは緑や青っぽい部分が見られるようになります。

生ゴミの臭い・アンモニア(尿のような)臭い

思わず口をふさいでしまうような嫌な臭いがしたら、もちろんくさってます。ネバネバした糸を引いていたりもします。

ツーンと酸っぱい臭い

鼻につく酸っぱい臭いは、「プロピオン酸」というものが分泌する物質が肉のアミノ酸を分解して出るもの。食べれません。

腐った鶏肉は加熱すれば食べられる?

<鶏肉は腐るとどうなる?腐った鶏肉の見分け方><鶏肉が変色!状態を色で見分ける方法><鶏肉が臭い!これは食べられる?>で紹介した、食べられない状態のものは絶対食べないでください!

食べることはできる、と紹介したものについても、自分の感覚が拒否反応を示すようなら、食べるのをやめてください。人間には、本能的に危険物を避ける能力があります(現代人はだいぶ弱ってますけど)。

さて、これらを踏まえた結論ですが、腐った鶏肉(ただし腐敗がひどくないもの)は加熱すれば食べられます。生焼けにならないよう中までしっかり熱を通すことが鉄則です。焼いてから煮込むなどすれば、さらにいいでしょう。そして、食べきる!これが大事です。もし大丈夫と思った鶏肉を焼いた時に腐敗臭や酸っぱい臭いがしたり、煮ている時にあまりにも大量のアクが出たら、食べるのはあきらめて捨てましょう。

鶏肉で起こりうる食中毒の種類

鶏肉は腐ってなくても食中毒を起こす可能性がある食材です。その原因となる微生物とその特徴についてご紹介します。

カンピロバクター

鶏肉で一番多いといわているのが「カンピロバクター」という細菌によるものです。春から秋にかけて発症しやすく、腹痛・発熱・下痢・嘔吐などの症状を引き起こします。これは鶏肉の内臓にある細菌で、鶏肉の4~6割に付着しているといわれます。酸素が苦手なのですが、熱にも弱く65℃以上1分で死滅します。

ただし、肉の中心までこの条件を満たすことが必要です。サラダチキンをご自宅で作る方も増えていますが、通常の作り方は、沸騰したお湯の火を止めて鶏肉を入れ、ふたをして放置というもので、気温や鶏肉の温度によっては中心が65℃にならないこともあるので注意が必要です。

カンピロバクターは少ない菌でも食中毒を引き起こす可能性があります。食中毒感染だけでなく、その後合併症として「ギラン・バレー症候群」という難病を発症するリスクがあります。鶏肉が触れた手や包丁・まな板などに菌が残ると危険があり、鶏肉を洗うと周りに飛び散って危険という説もあります。

加熱するだけで感染は防げる病気ですので、鶏肉は無理に洗う必要はありませんが、洗う時は流水ではなくボウルに入れた水の中で洗うようにしましょう。また、鶏肉を調理した後は手を洗ってアルコール消毒する、調理器具を洗剤で洗ってからアルコールや熱湯をかけて消毒すること、週に一度以上の塩素消毒をおすすめします。

サルモネラ属菌

乾燥に強く夏場に多い感染症です。さむけ・嘔吐・腹痛で始まり、その後38℃くらいの熱が3~4日続きます。たまごが主な感染源ですが、鶏肉が原因となることもあります。75℃以上1分の加熱で死滅しますが、やはり手洗いや調理器具の消毒は徹底しましょう。

ノロウイルス

寒くなるころから春先までが流行のピークです。症状は、下痢・腹痛・嘔吐で発熱はあまり見られません。鶏肉自体には存在しないのですが、ウイルスの付着や人・空気からの感染もあります。熱では対策できないので、こまめに洗浄・消毒することが重要です。次亜塩素酸ナトリウムによる2度拭きが一番有効ですが、高濃度のアルコールでも一定の効果があります。

セレウス菌

加熱しても死なないやっかいな食中毒病原菌です。自分に不利な条件になると形を変えて眠ったふりをして過ごします。嘔吐型と下痢型があり、嘔吐型はチャーハンやピラフ・パスタなどで起こり、米や麦などに付着していたことが原因となります。下痢型はめったにないのですが、鶏肉で起こる可能性はゼロではありません。

食中毒まとめ

食中毒の対策は「つけない」「増やさない」「やっつける(ころす)」が鉄則です。

キッチンを清潔に保つ、手洗い・調理器具の洗浄消毒・鶏肉の温度管理など適切な保存を徹底することを心がけましょう。

また、基本的に、お肉は充分に加熱して食べるようにしましょう。

ブラジル産鶏肉は危険?

家庭での鶏肉消費は国産志向が強いのですが、最近スーパーなどでブラジル産の鶏肉を目にするようになりました。安いので買ってみたいけど、ちょっと心配な方もいるのでは?ブラジル産鶏肉が危険とされる噂とその真相を確かめてみましょう。

ブラジル産鶏肉は、ブラジル人でさえ食べない?

ブラジルでの自国消費量は生産量の7~8割。反対に輸入量はほぼゼロ。ブラジル人はブラジル産鶏肉しか食べないといっても過言ではありません。ですから、これは真っ赤なウソ。

ブラジル産鶏肉は安いから危険?

安い理由は、エサが安く手に入る、土地代・人件費が安い、むね肉が人気でもも肉は余ってる、船便で大量に輸出するから低コストなどの理由。ですから、安いから怪しいわけではありません。

ブラジル産鶏肉は抗生物資やホルモン剤などで無理やり成長させられている?

食肉輸出のためには、抗生物質やホルモン剤などの使用について「国連食糧農業機関(FAO)」が定める国際基準を守る必要があります。これは日本もブラジルも同じ。つまり、抗生物質まみれ、というのはウソで、むしろブラジルは薬などの使用に関して一番厳しい国のひとつです。

ブラジル産鶏肉は、遺伝子組み換えのエサを食べている?

ブラジルでは、日本と違って家畜のエサとなる穀物(トウモロコシ・大豆)などの生産が盛んで、低価格で手に入ります。さらに、ブラジル政府は遺伝子組み換え飼料を与えることを厳重に禁止しており、遺伝子組み換えの懸念があるアメリカからの飼料輸入も禁じてるくらいです。ですから、これもダウト。

アメリカやEUがブラジル産鶏肉を「毒入り肉」として輸入禁止?

アメリカは世界一の鶏肉生産王国で、輸出量はブラジルについで世界2位。つまり、アメリカは輸入する必要もなく、輸出に関してはブラジルとライバル関係にあります。輸入する必要がないのにわざわざ輸入禁止にしたのは、アメリカの鶏生産者保護のため、ということだと思われます。

また、EUでは一部の悪質業者による偽装事件があったことから、ブラジルからの輸入を停止した時期があるのですが、現在では加工施設を限定して輸入が再開されています。ということで、これもデマですね。

ブラジル産鶏肉を食べる時の注意点

危険ではないブラジル産鶏ですが、にわとりの種類やエサ、飼育方法が違うせいか、ニオイがきついことがあるようです。

食べる前に、皮と肉の間にある黄色っぽい脂肪はしっかり取るようにしましょう。

ブラジル産に限らず、鶏肉のニオイを取る方法は、この後たっぷりご紹介します!

鶏肉の臭みを取る方法

臭みを取る方法は、大きく分けて4つあります。

化学的消臭方法

ニオイの原因物質を化学変化させて抑える方法です。鳥臭さなどのアルカリ性のにおいを酢などの酸で中和したり、クエン酸で脂質が酸化するのを抑え、ニオイを出さないようにすることができます。

物理的消臭方法

発生したニオイ物質を除去してしまう方法です。アルコールが揮発する性質を利用して、加熱することでニオイ物質も一緒に飛ばしてしまう方法(共沸作用)と、固形物を含む調味料に漬け込むことでニオイ物質を固形物に移してしまう方法(固形物による吸着作用)などがあります。

生物的消臭方法

微生物や酵素によりニオイ物質を分解する方法です。たとえば、麹やヨーグルトなど発酵食品を活用する方法になります。

感覚的消臭方法

別のよいニオイを上乗せして、嫌なニオイを感じさせなくする「マスキング」という方法です。ワインなどの酒、ハーブや香辛料などが利用されます。

匂いが強い鶏肉をごまかせるレシピ

食べれないわけではないけど、鶏肉の匂いがどうしても気になってしまう時、調理法を工夫することによって、気にせずおいしく食べるれようになります。いくつかレシピをご紹介しますので、是非お試しを!

鶏肉と野菜のマリネ

酢とクエン酸を使うことで「化学的」に匂いを抑え、スパイス・ハーブ・酒を使うことで「感覚的」にニオイをごまかす、理想のレシピと言えましょう。

材料(二人分) 鶏むね肉:1枚(250g程度) 塩:一つまみ コショウ:少々 小麦粉:適量

        玉ねぎ:1/2個 ピーマン:2個 パプリカ赤・黄色:各1/2個 にんにく(お好みで):1片

        <マリネ液>オリーブ油・お好みの酢:各大さじ4 酒:大さじ2 塩・砂糖:各小さじ1

              コショウ:少々、ローリエなどお好みのハーブ、鷹の爪 

作り方 ①鶏むね肉を一口大に薄く切り、塩・こしょうを揉みこんだ後、小麦粉をつける(つけすぎないように)

    ②大きめの容器にマリネ液の材料を入れ、細長く切った玉ねぎ・ピーマン・パプリカを漬け込む

    ③お好みでニンニクで香りをつけたオリーブ油で①を揚げ焼きし、油を切ったら熱いうちに②に加える

    ④空気が入らないように、ラップでぴっちり覆う

    ※鶏肉に下味をつけただけの状態でマリネ液に漬け込み、後で焼いてもOK

から揚げ

「物理的」に匂いを消す方法です。酒・みりん・醤油・にんにくと生姜のすりおろしなどの調味液に漬けこんでから、衣をつけて揚げるだけですが、にんにくと生姜は香りつけだけでなく、嫌なニオイを吸着し、酒のアルコール分が高温で揮発する時にニオイも一緒に持ってってくれます。揚げ物は高温調理なので、食中毒対策にもなります。美味しいだけでなく、ちゃんと理にかなった調理法だったんですね!

タンドリーチキン

ヨーグルトの乳酸菌による「生物的消臭」と香辛料による「感覚的消臭」のW効果があるレシピです。

鶏もも肉2枚(約500g)に対し、プレーンヨーグルト:大さじ3、ケチャップ・オリーブオイル:大さじ2、      にんにく・生姜(チューブでOK):小さじ1、カレー粉:大さじ1、塩:小さじ1/2 を漬け込んで焼くだけ!

鶏肉の下処理として、軽く塩こしょうして冷蔵庫に1時間以上入れたり、蒸し焼きにすると、よりジューシーに。

鶏ハム

固く腐りやすい鶏むね肉を、塩麹とオリーブオイルで漬け込み、ジップロックに入れて茹でるだけ!塩こうじは「生物的消臭」効果だけでなく、柔らかくジューシーにしてくれたり、味付けもいらなかったり、とっても優秀な調味料です。

鶏むね肉300gに対し、液状の塩麹:大さじ1.5、オリーブオイル:大さじ1、にんにく:チューブ1~2cmを袋の中で混ぜて冷蔵庫で1晩放置。翌日大きな鍋に水をたっぷり入れ、袋を入れて火をつけます。沸騰したら、ふたをして30分放置すればできあがり。手作りサラダチキンとは違い、水から茹でるので中心部もしっかり火が通ります。鶏むね肉は、皮を取るか、皮面にフォークでぶつぶつと穴を開けておくのがポイント。

塩漬け熟成どり

最後に、簡単でニオイも取れて美味しくなり、日持ちも長くなる、とっておきの方法を伝授します。鶏肉販売者でもある「JA全農」お墨付きのレシピです!

下ごしらえとして、鶏モモ肉の余分な脂肪や筋を取り除き、皮目を包丁で細かく刺し、できればチルド室で保存。キッチンペーパーを途中で交換すれば完璧。塩は小さじ1杯が6g、指3本が一つまみで1gと覚えると便利です。

なぜこんな簡単なことで美味しくなるのでしょう?鶏肉自体の「自己消化」によって、たんぱく質が分解されアミノ酸が生成され、旨味成分がぐっと増えたためです。この過程を「熟成(エイジング)」と呼びます。記事の初めの方<腐るってどんなこと?>でも説明したのですが、微生物による良い効果を最大限取り入れる方法です。ただし、鶏肉の熟成は3日が限度。これ以上放置すると腐敗の方に向かってしまいますので要注意!

鶏肉を腐らせないためにできること

ドリップをふき取る

腐る一番の原因はドリップです!鶏肉を買ってきたら、最低でもパックから出し、ドリップをふき取ってキッチンペーパーに包み、ラップなどで密封してからしまいましょう。特に「ひき肉」をすぐに使わない時、冷凍したい時はマストです。

余分な脂や筋などを取り除く

皮の間の脂や筋も微生物が繁殖したり、ニオイのもとになる部分です。できたら、冷蔵庫にしまう前に取り除くだけで日持ちが違います。特に「ささみ」の真ん中の筋は引っ張って取りましょう。

熱湯をかける

熱湯をかけた後、すぐに氷水か流水で冷やします。肉が充分冷えたら、水分をきっちり取ってからキッチンペーパーに包み、ラップで密封。殺菌になるだけでなく、余分な脂も流れ、柔らかいお肉になります。

塩を揉みこむ・塩で余分な水分を出す

鶏肉全体に塩をつけ、水分を出すとともに、表面にいる微生物を弱らせます。例えば、鶏もも肉のパックに書いてある重量が300gだったら、小さじ1杯(6g)でOK。10分位でも効果はありますが、できればキッチンペーパーに包んでチルド室で一晩ほど置いてみてください。水分や臭みが抜けて美味しくなります。塩は洗い流して、また水分をしっかり拭きましょう。

手羽先、ささみなどの場合、1本ずつこの作業をしてください。めんどくさい、という方はすぐに食べましょう。

塩こうじに漬け込む・ヨーグルトに漬け込む

発酵のちからで美味しくなるだけでなく、ニオイもこうじやヨーグルトに吸着され、お肉も柔らかくなります。作業も簡単。

スパイス・ハーブをまぶす

いやなニオイをよいニオイで隠してくれます。また、細菌の繁殖も抑えられるのでおススメ。カレー粉やコショウ、パプリカパウダー、バジル、タイムなど、いろいろ試してみるのも楽しいですね。

下味をつける

醤油・みりん・酒・にんにく・しょうがなどを混ぜた調味液などに漬けるだけ。ほどよい大きさにカットしてから漬ければ、そのまま唐揚げや炒め物などに使えます。特に冷凍する時におすすめです。

酒に漬ける

ビニール袋などに入れて酒に浸します。20分くらいで取りだし、水気を切ってキッチンペーパーで包み、ラップで密封してください。微生物やニオイも洗い流され、保湿性が高まり、柔らかくジューシーになります。

オイルに漬ける・酢に漬ける

塩で水分を出した後に漬け込むと、さらに日持ちがよくなります。そのまま調理できるので、下ごしらえとしても。酢に漬ける場合、りんご酢やバルサミコ酢など、あまり酸っぱくないものを使うか、他の調味料を混ぜて使うのがおススメ。

冷凍する

冷凍することで、一部の例外を除く微生物の動きを止めることができます。ただし、品質の劣化は避けられないので2~3週間を目安に使い切りましょう。空気が入らないようにラップでしっかり密封することが大切です。

真空保存する

鶏肉の表面についた微生物をできるだけ取り除いた後、真空状態で保存すればかなりの期間保存できます。

真空の保持期間が、袋の厚さやシーラーの性能などによって違いますが、冷蔵なら1.5~2倍、冷凍なら2~5倍日持ちするようになるとのこと。

鶏肉の変色やニオイについてのまとめ

鶏肉の賞味期限や、腐って食べれない状態の見分け方、変色やニオイについてご紹介してきましたが、あなたの疑問にお答えできたでしょうか?

現代は「フードロス(食品が無駄になってしまうこと)」が大きな社会問題とされ、sDGs(持続可能な開発目標)などでも重要な項目とされています。「品質保持期限」の表示法についても「おいしいめやす」に変更することなどが検討されています。大切なことは、表示されている「期限」が過ぎても、色やニオイについての知識があれば、ご自身で食べられるかどうか判断できること。また、多少ニオイがあってもおいしく食べられるレシピを覚えておけば大丈夫!ということです。

しかしながら、鶏肉は食中毒を起こしやすい食品です。不安がある場合には、胃腸が弱い方、お年寄りやお子さんは食べないようにした方がいいですし、できれば適切な保存方法を活用して、腐らせず安全に食べられるようにすることをおすすめします。そして、腐らせない方法とは「よりおいしく食べられる」方法でもあります!

どうぞこの記事を活用して、美味しい鶏肉がある食卓を楽しんでくださいね!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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