とっても甘いイメージのさつまいも。そのさつまいもがなんだか苦いという事もあります。
ではさつまいもが苦い、またはしびれる、えぐみを感じる原因は何でしょうか。
その正体はヤラピンという成分をはじめとする様々な原因があったのです。
さつまいもが苦い原因
ヤラピン
ヒルガオ科の植物の根塊(かたまりのような太い根)に含まれますが、イモ類ではサツマイモだけにある成分です。アルコールの一種「グリセロール」と「ヤラピノール酸(オキシパルミチン)」という酸が結合したものに、糖が結合した状態で「ヤラッパ樹脂」とも呼ばれます。化学用語ばかりで難しいですが、ようするに、脂質に糖がくっついた状態のもの。「ラムノース」「グルコース」「ガラクトース」という、それぞれの糖がくっついた3種類の「ヤラピン」があるそうです。
サツマイモを切ると、白いミルクのような汁が滲み出てきますが、これがヤラピンです。皮の近く5mm以内、または両端に多く含まれますが、断面の年輪のような輪や中央からも出ることがあります。このヤラピンは空気に触れると酸化して、次第にタールのような黒いネバネバしたものになります。このような酸化したヤラピンは苦みのもとにもなってしまうのです。
一方、ヤラピンには胃粘膜を保護する作用があります。また、腸の動きを促進し、便を柔らかくする働きもあるため、昔から下痢や便秘の薬としても使われてきたのだそう。また、大腸がん予防作用も期待されます。熱に強く、焼いたり蒸したりしても変化しないことも特徴です。
クロロゲン酸
「クロロゲン酸」は、コーヒーなどにも含まれることで有名なポリフェノールの一種です。抗酸化作用とともに、脂肪蓄積をおさえる効果も期待される成分ですが、いわゆる「アク」として、さつまいもの苦みの元にもなり、独特の渋みも感じられることがあります。また、空気や鉄分に触れると青黒く変色したり、アルカリ性のものと結合すると緑色に変色する特徴がある物質です。
生育不良などの時に多くなり、家庭菜園などで取れたものに、渋みやエグミが多いのはこのためです。
タンニン
ワインなどに含まれる抗酸化作用のあるポリフェノールと同じ成分です。アンチエイジングや血流を良くする効果が期待されます。さつまいもに含まれるタンニンはごく少量ですが、渋み・エグミのもとになります。
低温障害
さつまいもの好きな温度は13~16℃で、冷蔵庫などの低温は苦手な野菜です。低温にさらされると、断面に黒い斑点などがあらわれたり黒く変色してしまい、苦みもでてしまいます。
さつまいもの部分によって苦みは違う?
さつまいもの苦みの元となるヤラピンやクロロゲン酸は、両方の端に多くあります。これは、成長期に栄養素などを運ぶ管である維管束(いかんそく)がまとまっていて、その中にヤラピンやクロロゲン酸も多く残っているからです。両端は固い繊維だらけで固く食感も味も悪いので、思い切って切り捨てましょう。
また、表面の黒色などの変色部分は、この成分が酸化して苦みも出ていることが多くあります。
さつまいもの苦みに害はあるのか
基本的に、さつまいもの苦みに害はありません。
むしろ、ポリフェノールや糖脂質など体に役に立つ成分が多いほど苦みにつながりやすい、いわば諸刃の剣的なところがあります。苦みが出る状態を理解して、アク抜きなどの下ごしらえを適切に行えば、上手に栄養も取り入れられるという訳です。
さつまいものこんな苦みに注意
農薬の心配はある?
さつまいもにも病気があり、農薬が使われる場合もあります。ただし、農薬は食べる部分ではなく葉や茎に散布されること、残留しない量を散布することが決められていること、農薬残留については定期的に検査されています。ですから、食べる場合ほとんど農薬の心配はないでしょう。
ただし、万が一の場合もありますので、嫌な味や苦み・エグミ・しびれなどを感じたら、すぐに食べるのをやめ、腹痛・嘔吐・下痢などの症状が出たらお医者さんに相談してください。
カビなどのある腐ったさつまいもを食べて苦みなど異常を感じた時も同様です。
苦みが強いものを食べすぎた場合
苦みが強い場合、ヤラピンやクロロゲン酸が多いとも言え、栄養的には優れているのですが、体質によっては注意が必要です。ヤラピンは腸を刺激して便をやわらかくする作用がありますので、お腹がゆるくなりやすい方やお子様、お年寄りなどは食べ過ぎないようにしてください。苦い場合はしっかりアク抜きすること、下茹でするなどの下ごしらえが必要です。
さつまいもの苦みを消す方法
苦みが多い部分を取り除く
ヤラピンやクロロゲン酸などの苦み成分が多い、両端の細く固い部分や変色した部分を取り除いたり、皮を厚めにむいて調理するだけでも、かなり苦みは減らせます。
アク抜き
切ったら空気に触れないように水に入れアク抜きします。さつまいもがしっかり漬かるくらいの水に入れ、白い色になったら水を取りかえ、計3回15分程度水にさらします。水の中でさつまいもを揉むようにすると時間は短縮できます。水が白く濁らなくなればOKです。
また、塩水に入れると甘みも増すので、水だけよりオススメです。水1リットルに大さじ1.5~2杯、ちょっと多めに入れます。時間がある場合、3時間ほど塩水に入れれば甘みがさらにアップしますよ。天ぷらや、バーベキューなどの下ごしらえにオススメです。
甘露煮や電子レンジ蒸しなどにする場合、水にレモン汁を入れて浸すと、アク抜きだけでなく色よくさっぱり仕上がります。
下茹で
煮物にする場合、アクが少ない方が味が染みやすくなります。さつまいもを水から茹でて、火が通ったら水を入れ代えてから味付けをしましょう。きんとんなどでも、アク抜きを兼ねて下茹ですることで、黒っぽくならず色よく仕上げることができます。
丸ごと調理する
ヤラピンやクロロゲン酸、タンニンなど苦みのもとになる成分は、空気に触れ酸化することで苦みを増すので、傷や変色のないサツマイモの場合、なるべく包丁を入れず丸ごと調理するのがおすすめです。端っこは無理に食べず、取り除いてもいいでしょう。調理法は、次の項で詳しくご紹介しますので参考にしていただければ。
なお、長期間保存したサツマイモは甘みは増しているのですが、苦み成分も増していることがあるので注意が必要です。専門の貯蔵庫で温度や湿度を管理して保存された後、スーパーなどで販売されているものは大丈夫ですが、自宅で保存した場合、乾燥していたり、変色していたら念のためアク抜きをして食べた方がいいようです。
さつまいもの甘みを引き出す調理方法
さつまいものデンプンは、低温でじっくり熱を加えることによって、糖化酵素であるβ-アミラーゼの働きがよくなります。この酵素がうまく働くと、デンプンが麦芽糖に分解(糖化)され、甘みとしての麦芽糖が10%以上も多くなるのだそうです。
電子レンジ
さつまいもを洗い、水気がある状態で濡れたキッチンペーパーに包みます。その上からラップでしっかり包み、電子レンジにかけます。一気に高温で過熱すると甘みがでませんので、必ず解凍モードか200Wの弱モードを使ってください。最初に10分かけたら、ひっくり返してさらに10分ほど、様子を見ながら。太い部分に竹串がスッと通れば出来上がりです。
さつまいもの種類にもよりますが、ホクホクした感じの仕上がりになるようです。
オーブントースター
さつまいもを洗って水気がある状態でアルミホイルに包み、オーブントースターに入れ800Wで10~15分、ひっくり返して10~15分。最後に5分ほど蒸らすのがポイントです。ご自宅のオーブントースターの強さや、サツマイモの大きさで調整してくださいね。小さめのものがオススメです。
オーブン
洗って水気のあるさつまいもをアルミホイルに包み、予熱なしのオーブンに入れ、170℃で60~70分ほど焼きます。その後、オーブンのスイッチを切って10分位放置してください。焼き芋屋さんのようなネットリホクホクの仕上がりになります。
グリル
アルミホイルに包んでも、そのままでも。片面グリルなら10分くらいずつひっくり返して焼きます。両面焼きなら10~15分で焼きあがります。固い皮の場合、丸ごと焼いて中身だけ食べるといいかもしれません。
フライパン
洗ってアルミホイルに包んだサツマイモをフライパンに入れ、蒸し焼きにする方法です。水を少し入れて、ふたをして弱火で加熱していくことで、ねっとりしっとり出来上がります。片面ずつひっくり返しながら、太いところに竹串がスーッと通るまで加熱してください。
蒸す
蒸し器や無水鍋で蒸し上げると、しっとりした感じに仕上がります。
炊飯器
焦げる心配もなく、ほったらかしで出来るおすすめの方法です。
炊飯器にさつまいもを入れ、半分くらい浸るように水を入れます。。塩を一つまみ入れ、玄米モードで炊いてください。ゆっくりじっくり加熱されるので美味しくなります。さつまいもが大きすぎる場合、半分に切って、軽く塩水に浸してからの方が変色や苦みを防げます。
冷やしサツマイモのすすめ
ほくほく熱々のサツマイモを食べるのも美味しいものですが、是非お試しいただきたいのが「冷やしサツマイモ」。冷やすことで、糖化したデンプンの一部が「レジスタントスターチ」というものに変化し、血糖値を上げにくくするとともに、胃や小腸で消化されずに大腸に届くようになります。このレジスタントスターチと食物繊維、ヤラピンの効果でダイエット効果などがさらにアップします。
冷凍して、半解凍のシャーベット状態で食べたり、ちょっと冷たいままクリーミーな状態で食べるのもおすすめ。冷凍する時に食べやすい大きさに切っておけばいいですね。ただし、早く食べたいから、と電子レンジにかけたりしないでくださいね!せっかくのレジスタントスターチが、またもとのデンプンに戻ってしまいます。
さつまいもが苦いまとめ
さつまいもの苦み成分は「ヤラピン」「クロロゲン酸」「タンニン」の酸化などによるもので、皮に近い部分や両端に多いこと、実は栄養的には優れた成分ということがわかりました。また、下ごしらえや調理法を工夫すれば、苦みを減らして甘さを引き出せることもわかりました。
さつまいもの皮には、アントシアニンという色素もあり食物繊維なども豊富ですから、できれば皮ごと食べたいものですね。冷やしサツマイモなども是非試してみてくださいね!